お兄ちゃんになった日

小児患者さんを診ていてのミッキーの楽しみは、やはり成長をこの目で確認できることです。
特にフッ素コースの小児患者さんは1歳~4歳児なので、3ヶ月に一度の来院のため、3ヶ月の成長はとても大きなものです。体だけでなく、心の成長も楽しみです。

どうやって心の成長が歯医者さんでわかるのか?それは・・・
幼児さんにとって泣かないで、一人で診療台に座ってできるのはとても大変なことなのです。
まず、ママと離れるというところが第一のハードルです。

フッ素コースのお子さんは、まずママと二人で座ります。最初はママと一緒に座っても大泣きする子もいます。泣いてもまず、ミッキーは歯ブラシでお子さんの歯をゴシゴシ磨きます。もちろん泣いてもやりますよ。そしてフッ素を塗る時はみんなさらに大泣きです。でもミッキーは最後まで泣いてもやり続けます。
この時に泣いたからといって、途中で止めたりしてはダメなのです。
これは子供に、ミッキーは泣いてもやるんだなを学習させるためです。

月例にもよりますが、この状態を数回続けると、泣くけど泣く時間が短くなったり、泣くけど口を開くようになります。
気がつけば、泣かないでミッキーに歯ブラシをやらせてくれて、フッ素も上手に塗れます。

そして次のステップです。だいたい3歳くらいになると話がわかるようになるので、ミッキーはやりながらいっぱい語りかけます。
どうして歯磨きするのか?どうしてフッ素をぬるのか?上手にできる子は強い子だよとか・・・
子どもは聞いていないようでちゃんと聞いています。
そしてママに協力してもらい、ミッキーが話したことをお家でも話してもらいます。

すると一人で診療台に座り、ママは側にいるステップに移行します。
この頃になると、歯医者さんの機械の歯ブラシ(ミッキーはクルクル歯ブラシと呼んでいます)ができるようになります。
このクルクル歯ブラシができた時が次のステップにいく大きなチャンスです。
ミッキーはクルクル歯ブラシができた時、100倍くらい大袈裟に子どもを褒めます。
そしてまたママにお家の人、みんなにこの歯医者さんのクルクル歯ブラシができたことがすごいことを伝えて、お家でも100倍くらいみんなで褒めてもらうようお願いします。

すると、子どもはとても自信満々になります。今までできなかったことができて、みんながすごく褒めてくれる。すごくお兄ちゃん、お姉ちゃんになったような気になり、また褒められたくて歯医者さんに行きたくなるのです。

しかし、このステップ通りにスムースにみんな進むわけではありません。
環境や病院に対しての記憶、性格、親子関係 色々な理由がありますが、かめさんもいればうさぎさんもいるということです。そんな時は根気よく一つ、一つ進めていくしかありません。

実は先日なかなかこのステップが進まない子が、突然一人で診療室に入って来ました。
ミッキーはこの変化を見逃しませんでした。ママが後ろから来ましたが、目で合図をしてママを診療室には入れませんでした。
怪獣のぬいぐるみを持っていたので、とっさに「今日は歯医者さんごっこだよ」とその子に怪獣の歯をクルクル歯ブラシで磨いてもらい、本物のフッ素を怪獣の歯に塗ってもらいました。
「じゃー 今度はミッキーが歯医者さんだよ」とミッキーがその子の歯を磨き、フッ素をぬりました。
感動です。一人で診療台に座って、はじめてできたのです。

最後に院長にも大きな口を開けて診せてくれました。
待合室に行き、ママの手をにぎきって「成長したね」と言うと、ママは涙ぐんでいました。
思わずミッキーもうるうるしてしまいました。

数日して、また別の子どもがフッ素コースに来院しました。
その子のママは先日、ママのケアの時に小さな子が一人で診療室から出てくるのを待合室で見ていました。
すると、ミッキーに「小さくても一人で入れる子もいるんですね。うちの子も一人で入れるようにします」と言ってくれました。実はこのママの覚悟も大切なのです。
ミッキーは今日は一人で入れるかな?と思っていると、そのママが「もう、お兄ちゃんだよね」
とママが言っているのが待合室から聞こえてきます。
すると、魔法にかかったかのように、一人で診療室に入ってきてくれました。

あとはスムーズにクルクル歯ブラシもフッ素塗布も上手にできました。
またまた100倍褒めると、その子はニコニコ笑顔がいっぱいでした。

その子のママに「どんな魔法をかけたんですか?」と聞くと
お家で「もう お兄ちゃんだよね・・・と毎日言い続けました。」

この二人のお子さんが歯医者さんでお兄ちゃんになった日でした。 

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